遺産分割の訴訟について
遺産分割と訴訟(遺言無効、遺産確認、相続人の地位確認、不当利得)
実は、遺産分割では訴訟(裁判)という手続はありません。
遺産相続トラブルが起こったとき、それが遺産分割方法に関するものであれば、遺産分割調停、審判、抗告という手続きを利用することになります。
しかしそうではなく、遺産分割の前提問題となる部分についての争いについては、遺産分割手続きでは解決できないので、遺産分割協議前に訴訟によって解決しておく場合があります。
具体的には、
☆遺言書が有効かどうか
☆ある財産が遺産に含まれるかどうか(遺産の範囲の問題)
☆ある人が相続人に含まれるかどうか(相続人の範囲の問題)
☆被相続人の財産が生前に引き出されている(不当利得の問題)
が問題になります。
遺言無効
有効な遺言書がある場合、遺言書の内容に従って遺産分割が行われます。
遺言書が無効な場合、遺言書がない場合と同じように、法定相続人間で遺産分割協議をすることになります。
このように、遺言書がある場合、それが有効か無効かによって遺産分割のための方法が異なります。ゆえに、遺言書の有効か無効かに争いがあるときは遺産分割の前提として遺言の有効無効を確定しておく必要があるのです。
遺言書が有効か無効かの確定は、遺産分割調停や審判の手続きではなく、訴訟手続によることになります。
遺言無効の理由として主張されることが多いのは、遺言書の偽造、認知症の親を騙して書かせたなどという主張です。
当事務所における遺言無効の解決事例
故人が残した自筆証書遺言の無効を指摘されたが、故人の遺言能力を証明し、訴訟にならずに解決し相続手続までスムーズに進んだ事例
遺産確認
遺産分割協議をすすめるためには、どの財産を分け合うのか(遺産の範囲)がはっきりしている必要があります。ある財産が、遺産の内容に含まれるかどうか不明なままでは遺産分割協議を始めることができません。そこで、遺産の範囲について争いがある場合には、まずはその内容を確定してから遺産分割の手続きを進める必要があります。
ある財産が遺産に含まれるかどうかを決定するための裁判手続きは、訴訟であり、具体的には、遺産確認訴訟となります。
遺産の範囲が争いになる事例としては、たとえば被相続人名義の預貯金があるが、実際には相続人のうち1人が自分のお金を積み立てる口座として利用していた場合や、逆に相続人名義の預貯金があるが、口座の内容は被相続人の財産である場合などが挙げられます。
相続人の範囲
遺産分割協議を行うには、相続人の範囲(誰が相続人になるのか)が確定している必要があります。誰が相続人になるのかがわからないと遺産分割ができないからです。
そこで、相続人の範囲に争いがある場合、それは遺産分割の前提問題として遺産分割前に解決しておく必要があります。
そのために利用する手続きは、相続人の地位不存在確認訴訟です。
不当利得(使い込み)
例えば、母親が死亡し、長男と次男が相続人という事例において、母親と同居していた長男が、母親が死亡する前に、母親のキャッシュカードを使って、母親名義の口座からお金を引き出していた場合です。
長男からすれば、母親の介護で苦労をしていたりするので、次男の勝手に引き出しているなどと母親の死後に指摘されたりすると感情的な対立が燃え上がる傾向にあります。
当事務所における不当利得(使い込み)の解決事例
母の預金の使い込みを指摘され、訴訟となったが、生活費であることを立証し和解できた事例
訴訟を視野に入れた準備を相続問題で困った時には弁護士へ相談
協議や調停の前段階で、事実関係に争いがあり、話し合いが平行線を辿りそうな時には、万が一に備えて、訴訟も視野に入れるべきです。
ただし、訴訟は、当然容易ではなく、長期戦になることもしばしばです。
そのため、訴訟を提起するかどうかの判断は、相続問題を客観的に見て、「訴訟にかかるコストを差し引いても満足する結果になりそうか…」と十分に検討するべきです。
後悔しないためにも、訴訟の流れや、訴訟になった場合の見通しなどについては、事前に専門家である弁護士にご相談ください。