相続税対策
相続税対策は必要?基本的な考え方と4つの方法~不動産の財産評価についても解説~
相続は一生に一度あるかないかの人がほとんどで、「相続税対策なんて自分には関係ない」と思っている人も多いようです。ところが、相続が発生してみたら、思いがけず相続税が加算されて納税に困るという可能性もあります。
ここでは、相続税対策にはどのような方法が有効なのか見ていきましょう。
相続税対策が必要なのはどんな人?
国税庁が公表しているデータによると、2017年に亡くなられた被相続人のうち、8.3%の割合で相続税が加算され、その税額平均は被相続人1人当たり1,807万円となったそうです。では、相続税が加算されるのはどんな人かというと、「基礎控除額を超えた人」となります。
基礎控除額の算定方法は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となります。
仮に、相続する人が妻と子ども2人であれば「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」、妻も亡くなり子ども1人が相続するのであれば「3,000万円+600万円×1人=3,600万円」が基礎控除額となり、この金額以下の遺産相続の場合には相続税加算はされず、申告も不要です。
相続税対策の基本的な考え方と4つの方法
相続税対策を考える時の基本的な考え方は次の2通りです。
・遺産総額が基礎控除額以下になるようにする
・課税対象となる相続財産を圧縮する
遺産総額が課税対象にならないようにするか、そこまでできなくても、課税率がなるべく低くなるようにするということです。相続税は累進課税方式のため、相続時の財産が圧縮されていることによって税率が低くなるのです。
こうしたことを実現するための具体的な方法としてよく挙げられるのは、「生前贈与」「生命保険」「不動産」の3つがあり、節税効果も高くなりやすい方法です。それ以外にも対策はありますので、4つ目を「その他」とし、それぞれ見ていきましょう。
1.生前贈与
資産の一部を妻や子、孫などに生前に贈与することで、相続財産の総額を減らすことができます。
生前贈与をする場合、金額など条件によっては贈与税が課税されることがありますが、相続税よりも税率が低くなるようにするか、非課税の枠内で贈与することがポイントです。また、一度に多くの財産を贈与すると贈与税率が高くなってしまうので、数年から数十年という長い年数をかけて行う方が、節税効果が高いといわれています。
生前贈与の具体例としては、次のような方法があります。
・1年間に110万円までが非課税となる暦年贈与
・1500万円までが非課税となる教育資金贈与
・1200万円までが非課税となる住宅取得等資金贈与
・2000万円までが非課税となるおしどり贈与
など
これらの制度を使って、相続財産を小さくし、なおかつ非課税で財産を親族などへ残すことができるメリットがあります。これらの制度は、一人の人が複数の組み合わせで贈与を受けることもできます。ただし、適用するための条件などが細かく決められており、贈与資金の管理方法によっては、長年かけて非課税と思っていた資金に課税されてしまうこともあるので、注意が必要です。
また、多少贈与税を支払ったとしても、贈与をせずに満額で相続をするより節税となることがあります。贈与税も累進課税方式なので、課税対象が少額であれば、税額も少なくなるからです。そのため、非課税となる金額にこだわらず、バランスを考えて贈与することも重要です。
2.生命保険
被相続人が亡くなったことにより取得した生命保険金も、相続税の課税対象となりますが、「500万円×法定相続人の数」の額までは非課税となります。(仮に生命保険を1人の人が受け取ったとしても、あくまでも法定相続人の数で計算します。)
最近では、高齢者でも加入できる保険商品もあるため、比較的どなたでも行いやすい方法です。
3.不動産
相続税対策に不動産が挙げられる理由は、「評価額の引き下げ」という仕組みを利用できるためです。
税金の算出元となる不動産の財産評価は、路線価や固定資産税評価額を基準とします。この路線価や固定資産税評価額は、不動産取引における実勢価格より低く設定されています。一般的に、路線価は実勢価格の8割、固定資産税評価額は実勢価格の6割程度といわれていますので、現金で相続するよりも不動産として相続した方が、相続財産を圧縮できるのです。
ただし、現金から不動産に資産の組み換えを行う場合には、アパート経営などのように投資や経営の要素が強くなる事も多いです。相続税対策の目的だけのためにそれらを行うのかどうか、目的と効果をよく検討して行う必要があるでしょう。
4.その他
その他にも相続税対策といわれる方法はありますが、その中から、比較的取り組みやすい対策をご紹介します。
・お墓や仏壇
墓地や墓石、仏壇・仏具、神棚などの祭具も非課税です。お墓や仏壇などの財産価値を考えるよりも、それらを購入するために相続財産を圧縮できることがメリットです。「亡くなってからお墓を建てるための資金」としてとっておいた現預金は相続税の対象になってしまいます。
相続税対策は早めの行動を開始した方が効果的
相続税対策は、対策にかけることのできる時間が長ければ長いほど大きな効果を生み出します。
たとえば、暦年贈与は長く行えばそれだけ相続財産を圧縮することができます。ただし、相続開始前3年以内の贈与については、一部の例外を除いて課税されてしまいます。
また、相続税の申告と納税は、被相続人が亡くなった日から10ヵ月以内に行うことになっています。原則としては、それまでの間に、遺産分割協議を整えておかなければなりません。遺産分割協議が整わない場合、相続人の1人が相続税を代表して納めるなどの方策をとらなければ、期限を過ぎてしまい、相続税に延滞税がかかってしまいます。
以上のことから、まずはなるべく早いうちに相続の対象となる財産がどれくらいあるのかを確認し、弁護士に相談しましょう。また、相続税対策を検討する場合には、実際の納税額をシミュレーションしながら適した選択をする必要があります。そのためにも、連携税理士と対応にあたってくれる弁護士に相談することをおすすめします。