遺産分割調停を申し立てられてしまった場合
遺産分割調停を申し立てられるとどうなるか
遺産分割協議を進められているときに、突然、遺産分割調停の申立を受けた旨が記載された内容証明郵便が裁判所から届く場合があります。
その場合でも、無視をせず、または焦って性急な対応をせずに、法律の知識がある人にご相談ください。
特に、当事務所の相続に積極的に取り組んでいる弁護士は、そのような遺産分割調停を突然申し立てられてしまった方の対応の経験があるため、安心してご相談いただけます。
調停は話し合いの場ですので,柔軟に早期の解決を図ることができたり,予想以上に相手方から譲歩を引き出すことができたりする場合もあります。他方で審判では,もはや対立関係が深刻となってしまい,そのようなことが望めないことも少なくありません。
遺産分割調停の申し立てをされたことがわかるタイミング
遺産分割調停の申し立てをされると、下記のような書類が届きます。
・調停期日の通知書
・申立書の写し
・進行に関する照会回答書
調停の期日を欠席するとどうなるか
遺産分割調停の申立てを無視して、期日を欠席するとどうなるのでしょうか。
実は、欠席をしても遺産分割調停は開かれます。その期日に出席している当事者にのみ話を聞くことになります。欠席が続くと、自分の主張を聞いてもらえない、調停委員の心証が悪くなるなど、遺産分割調停が不利に進む可能性が高まります。
もし、どうしても出席できない場合は、期日の延期希望や2回目の期日について希望を提出し、調整を希望することが可能です。また、裁判所が遠方の場合やご高齢で裁判所への出頭が難しい場合については、弁護士を代理人に選任や電話会議システムの導入を検討しましょう。
遺産分割調停を有利に進めるために
では、遺産分割調停を有利に進めていくために、当事務所の弁護士から調停期日の流れやポイントを解説いたします。
遺産分割調停期日の流れ
初回の調停期日については、裁判所から指定されます。期日には、裁判所に出頭し、調停委員に主張を伝えていくことになります。
裁判所には遺産分割調停の申し立てをした申立人を含めた他の相続人も集まりますが、調停委員に主張を伝える時は調停委員と1対1で伝えることになり、また調停委員に話す以外の時間は控室で待機することになりますが、その控室も分かれているため、遺産分割調停の当事者が裁判所で顔を合わせることはありません。
※最終回のみ、当事者全員に成立内容等を説明するため顔を合わせる場合があります。
前述の通り、通常は調停期日を積み重ねて調停の成立を目指していきます。全相続人が納得し、調停がまとまると、調停調書が作成され、それが債務名義と言って強制執行もできるような法的効力を持つ文書になります。調停が成立した以上は、調停調書通りの遺産分割をせざるを得なくなりますので、注意が必要です。
有利に進めるために気を付けること
遺産分割調停を有利に進めるためには、調停委員に納得してもらえるように、依頼者の権利を最大限確保できる法的主張を丁寧に組み立て、証拠を提出することが重要になります。
その際、調停がまとまらずに審判(後述)に移行することを見据えながら対応することが重要です。
なぜなら、調停を進める調停委員をとりまとめる裁判官は、審判を担当する裁判官ですので、調停時に不利になっている場合に審判で不利な状況を打開するのは難しいことが少なくないからです。
そして、調停は段階的に進行することになっています(すべての争点を並行していっぺんに話し合おうとするとだれがどの点について主張しているのか曖昧となり協議がまとまりを欠いてしまうからです。)。
調停は以下の順序で進行していきます。
≪具体的な調停の進行≫
1 遺産分割の当事者(相続人の範囲)の確認
2 遺産の範囲
遺産分割の対象となる財産の範囲を確定します。要するに、この段階では、「何を分けるか」を全員で合意することを目指します。
当然には分割対象とならない財産についても、当事者全員が合意する限り、遺産分割の対象に組み込むことができます。例えば、「被相続人が所有していた不動産から相続開始後に発生した賃料収入」や、「相続債務」などがこれにあたります。
3 遺産(価値)の評価
遺産分割の対象とする財産の評価を確定します。とくに、不動産については頻繁にその評価額を巡って対立が生じます。
4 各当事者の取得額の調整
法定相続分や指定相続分が出発点となりますが、事案によっては、特別受益や寄与分を考慮した調整がなされます。
5 遺産分割方法
上記4で決まった取得額に応じて、現存する個々の遺産についての分割方法を取り決めます。分割方法としては、以下のようなものがあります。
現物分割:個々の財産の形状や性質を変更することなく、各相続人に単独取得させる手段です。
換価分割:遺産を第三者に売却し、換価した後、その売却代金を共同相続人間で配分する分割手段です。
代償分割:一部の相続人がある財産を取得し、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。
共有分割:遺産の一部または全部を、物権法上の共有取得とする分割手段です。
上記の進行を踏まえなければなりませんので、適切なタイミングで適切な主張をする必要があります。
例えば、遺産分割方法について話し合っている段階で、遺産の評価について不満をいっても調停員に聞き入れてもらえず、審判でも不利に扱われてしまう可能性があります。
自分の主張したい事実が、どの段階で主張すべき事実なのか見極めるのは、簡単ではありません。弁護士と相談して主張をどのように位置づけるかを見極めることが肝要です。
遺産分割調停の代理人を依頼するメリット
調停では法的知識を非常に強く要求される点、調停委員を介した交渉が大変である点から、調停の段階で弁護士に依頼するメリットは大きいでしょう。
調停を有利に進めるためには、いかに調停委員に納得してもらえるように、タイミングを見極めて、証拠を用い、主張を組み立てるか、ということが重要になります。また、先述の通り、審判に移行することを想定して、主張を組み立てることが重要となります。
そのような主張の組み立てについては弁護士が熟知しているので、よほどご自身の法的知識が豊富で、交渉力に自信がない限りは、弁護士に依頼されることをおすすめいたします。
遺産分割審判とは
調停が不調になると審判に進展する
遺産分割の調停で各相続人が納得しない(これを調停の不調と言います)場合、自動的に審判手続きに移行します。
遺産分割審判は、調停同様に1か月から2か月に1回のペースで、通常1~2年、長ければ3年以上かかります。
調停と審判の違い
遺産分割調停では、調停委員が双方の主張を聞き、調停が成立できるように、相続人間で合意形成をするためのサポートを進め、調停が成立すると調停調書が作成され、強制執行もできるような法的効力を持つ文書となります。
遺産分割審判では、裁判官が、双方の主張を聞いたうえで、判決を下します。審判で下された判決は法的強制力をもち、判決内容には原則従わなければなりません。
審判終了後の流れ
審判が終了すると、原則としては判決に従って、相続手続を進める必要があります。具体的には、預貯金の解約手続、不動産がある場合は不動産の名義変更手続、財産の分配作業等があります。
これらの相続手続を怠ると、後々の相続手続、特にあなたの死後や共同相続人の死後の遺産分割で非常に苦労することになりますので、確実に進める必要があります。
もし審判に不服がある場合は、2週間以内に「即時抗告」する必要があります。
なお、即時抗告ができる事件は法律によって決まっており、その内容を作っていくには法的な専門知識が必要になるため、できるだけご本人ではなく、法律の専門家に依頼したほうが良いことが多いです。
サポート内容
当事務所では遺産分割調停を突然申し立てられてお困りの方に、弁護士より最適なサポートを提供させていただいております。
初回60分無料相談
当事務所では、相続の相談について、初回60分を無料とさせていただいております。
遺産分割について、あなたの不安点を親身にヒアリングさせていただき、弁護士が相続の不安点を解消できるように、ご提案させていただきます。気になることや不安なことがあれば、ささいなことでもお気軽にご相談ください。
遺産分割調停へ依頼者の代理人として出廷
調停という手続きの性質上、その場で聞かれたことに順次回答していくことになります。なかには、素直に回答しては勘違いされて不利に扱われてしまうのではないか、と心配になることもあろうかと思います。そんなときに、うまく回答できなければ、調停員に誤った心証を抱かせてしまうかもしれません。
しかし、弁護士が一緒に出廷していれば、調停員の質問がどのような意図をもってなされたのかを判断し、適切な回答をしてくれます。また、ただちに回答が難しい内容であれば、「確認が必要なので追って書面で提出します。」と調停員に不信感を抱かせることなく立ち回ることが可能です。
なお、どのように主張されたいのか、事前に打ち合わせをさせていただきます。また、その際に必要な証拠となる資料をご用意いただくこともございますが、基本的には弁護士があなたの主張したいことをお伺いの上で、調停委員に伝わるように整理し、もし主張を通すことが難しい場合は妥協案についてもご提案させていただきます。
審判移行時のサポート
遺産分割審判では、法律に基づき、主張・立証することが不可欠となります。
そのため、できるだけご本人1人で審判に対応するのではなく、法律の専門家に依頼したほうが良いことが多いです。ご自身で対応した場合、必要な主張・立証が欠けていたために想定外の審判が出るという事態も考えられます。
審判まで進展したという案件の性質上、事情としても、法的にも込み入った状況にあることが想定されます。その場合、整理して法的主張を組み立てるには、弁護士とやりとりすることが重要となります。
裁判官も人間ですので、整理されていない主張については読み落としがあったり、重要な事実を見過ごしてしまうという事態が発生します。
相続に積極的に取り組む弁護士は、そういった遺産分割審判においての法的主張の組み方を熟知しているとともに、法律的に重要な事実を見落とさないように、確実に把握して、依頼者の希望を実現できるよう進めることが可能です。